2008年9月23日火曜日

Bucket List (バケツの一覧表)


 五月の帰国の際の、次男の激励は《温泉》だけではありませんでした。映画も見せてくれたのです。東京の郊外のスクリーンを何枚も持つ大型映画館で、数ある中から『うーん!』と唸らせる映画を見せてくれました。それは「最高の人生の見つけ方(原題、Bucket List”)」でした。

 老境を迎え、それぞれが「癌」を告知された二人の男性の物語でした。一人は、菜っ葉服を着て、長らく自動車整備工として勤勉に働き、妻を愛し、子どもたちを育て上げてきたアフリカ系アメリカ人、もう一人は、敏腕の実業家で資産家、家族を犠牲にしてきたことが伺える白系アメリカ人でした。この二人が、同じ病院の同じ病室で、入院して出会うのです。病院以外では、決して接点を見い出すことなどない二人なのですが、余命わずかな二人が、不安を胸に入院した同じ病室で、不思議な出会いをするのです。自分の夢よりも家族の幸せを願いながら働いてき たカーター、お金だけは有り余るほどあるのに、家族はまったく見舞うことがなく、ただ秘書だけが事務的にやって来るのみのエドワード。


 

 治る見込みの無いガン告知を受けた二人を、かたく結びつけたのは、二人で書き込んだ1枚のリスト、”Bucket List (自殺者は首に縄を掛けてからバケツを蹴ってことに及ぶところから、死ぬまでにしておきたいことを書き出すことを言っているようです)”の実行でした。生きている間にしておきたいことを実行していくのです。「美しく荘厳な風景を見ること」、「見知らぬ人に親切にすること」、「涙が出るほどに笑う こと」……とカーターは書き上げました。「スカイダイ ビングをすること」、「ライオン狩りに行くこと」、「世界一の美女と過ごすこと」……と、エドワードが付け加えたのです。そのリストアップした課題を実現 するために、エドワードの自家用ジェット飛行機に乗って、「世界旅行」に出かけるのです。『や り残したこと!』って意外とあるのではないでしょうか。それを生涯の最後に叶えられるのですから、この二人は恵まれているわけです。人生に悔いを残さない で、『最高の人生だった!』と心の底から喜んで死んでいこうとしたのです。実は、二人の残された時間は半年でした。ハラハラするような場面の中に、微笑や 苦笑いがあり、厳粛な死の現実を、ユーモアーをこめて描いた秀作でした。結局、カーターがエドワードの死に逝く様を見送るのですが。演じたジャック・ニコルソンもモーガン・フリーマンも、実に渋味ある好演でした



 『う~ん、自分だったらは、どんな「Bucket List 」を書き上げるのかな?』、と映画を観ながら考えていたのですが。最近、この映画のことを思い出して、しばし考えてみました。1つは、長女の結婚式に列席すること、2つは、次男の結婚式に列席すること、3つは、孫たちと遊ぶこと、4つは、遼寧省撫順の近くの「平頂山」にある記念館に花輪を携えてお詫びに行くこと、5つは、ネッカー河畔の街ハイデルベルクに旅行すること、つは、母と義母の百歳の誕生会に出席することつは、長兄と親しく交わりをすることつは、船に乗って日本海を渡って日本に行くこと、こんな8つのことを考えてみたのですが。死の宣告なしの思いですから、現実味に乏しいかも知れません。これらは、百才になるまでには実現できるでしょう。もちろん食べたい物、読んでみたい本、訪ねてみたい街、会ってみたい人などもありますが。でも「癌告知」を受けたら、覚悟を決めてカーターとエドワードのように、人生のしめくくりをつけられるでしょうか。リストアップされた課題についても、どれを優先順位の最初におくことになるでしょうか。いつでも死に逝く心備えをしながら、生きるつもりですから、健康管理にも心配りをしないといけないようです。



 自分のリストを、一緒に書き上げる人生最後の友人と出会えるでしょうか。それは、いつ、どこででしょうか。彼らのように病院でしょうか、それともバス・ターミナルかスター・バックスの外のベンチでしょうか。友をえ、行き先がきまったら、きっとタクシーか公共のバスに乗って行ける範囲で、行けるところまで行くことになるでしょう。そのほかは個人的にしなければならないことなのかも知れません。『しまった!』とは言えないのですから、そう思える間にしておかないとならないようですね。おっと、、、まだしなければならない日常の義務があるのです、これに専心しないと。あの二人のなきがらが、エベレストの頂上の石くれの間に置かれていましたが、私の場合は、この数年、水分を補給して養ってくれた「闽江(ミン・ジアング)」の流れに注いで、七つの海に連なる「東シナ海」に流して欲しいと願うのですが。

(写真は、エヴェレスト(http://yeti.justblog.jp/photos/8000m/)、主演の二人、モーガン・フリーマン氏、中国の瀋陽を走る「公交車」です)


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自己紹介

 次男に勧められて始めた「ブログ」ですが、2007年7月から1年間休刊しました。その間、他の「ブログ」を開設したのですが、2008年7月に、名前を変えて再開しました。  父として子どもたちに、爺として孫たちに、また母や兄弟や友人たちにも、何かを語り残したいと願って、続けています。