高倉健
同級生に誘われて、「網走番外地」や「唐獅子牡丹」の映画を観たことがあります。高倉健の主演で、博徒の世界の刃傷や報復の物語でした。自分の血の中に、ヤクザの血が流れているのではないかと錯覚するほどに、『格好いい!』と思いました。大学紛争の時代、東京大学の全共闘のパンフレットに、背に唐獅子牡丹の刺青を入れた健さんの背中を模した挿絵(イラスト)が載っていましたが。東大生がそうだったのなら、私たちが、健さんに憧れても当然だったと言えるでしょうか。単純明快な物語で、スカッとさせてくれました。どちらかの映画は、オリンピックが東京で行われた年だったのです。
その健さんを、久しぶりに銀幕に見たのが、「鉄道員(ポッポヤ)」と「単騎千里を走る」でした。初老になっていて、背中の唐獅子牡丹も元気がなくなってきているだろう彼が、まったく違った堅気の世界に生きる男を演じていたのです。その違いを埋めるのに少し時間がかかったのですが、無口な男っぽいところや渋さは、まったく変わっていませんでした。もう彼の手には、ドスや鎧通しはなかったので、なぜかとても安心したのです。
中国でダントツ人気の日本の映画俳優が、この高倉健なのだそうです。いまだにそうなのです。博徒を演じた彼ではなく、あの「文革」の終わった1970年代の終わりに製作された、「君よ憤怒の河を渉れ」と言う映画の元検事の主人公を演じた彼が、中国の人々の心を捉えたのです。現代の50代前後の人たちには特別なのでしょうか。
私たちを教え下さる先生が、この健さんを知っていたのです。彼女のお父さんが50代でしょうから、お父さんに聞いてのことなのでしょう。健さんとしてではなく、演じた主人公の名を知っておられたのです。
混乱し経済の立ち遅れていた中国が、外国映画の上映を許した初期のものでした。銀幕に映し出された、近代的な都市の様子、乗る車、走っている電車、着ている衣服、何もかも珍しかったのです。開放政策が始まって、目標を必要としていた中国の人々に、この映画が、その目標を提供したのだそうです。億という単位の人が観たといわれています。学校の校庭に張られた銀幕の前と裏から、何千と言う人が、中国中で観たとのことです。
侵略した日本が、本当に憎いではないのです。日本と日本人とを赦して、受け入れようとする寛大な心があるからなのです。阿部首相には、「慰安婦問題」などで、こちらの人々の感情を逆なでするような言動を慎んでいただきたいと心から願うのです。真正な友情で、敬意を十二分に払って関係の回復と構築に当たって頂きたいと、切に願うのです。 刺青や鎧通しで脅したりしませんから。
今週、温家宝首相が訪日され、国会で、中国の首脳として始めて演説をされるようです。旅の無事を願いつつ。
(写真は、松竹映画「単騎千里を走る」の一場面)
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