2007年2月25日日曜日

次男


 どこで買い込んだのか、紀州梅や漬物やお茶漬けや黒飴や羊羹など、大きなかばんに詰め込んで、次男が、我が家を訪ねてくれました。春節の直前の週のことでした。見知らぬ土地で半年、生活環境をまったく変えてしまった親を心配しての問安だったのです。北京から、500元ものタクシー代を払ってでした。まったく言葉が出来ませんから、度胸1つで通訳機を忍ばせての来訪でした。

 こちらに来て間もなくして、小包が彼から届きました。決して独身だからではなく、気配りの子として、さまざまな家内と私の好物が詰めてありました。きっと、『これを食べたら喜んでくれるよな!』と思ってだったことでしょう。まさに、私と家内は、優しい心配りを喜びました。ことのほか家内の喜びは大きかったようです。思春期の真直中で、青春の蹉跌とでも言うのでしょうか、悶々と苦しんでいた彼に、家内は何度涙を流し、眠れない夜を過ごしたことでしょうか。私にとっては、母親の愛の深さを見せてもらった日々でした。
 
 ところが、そんな過去を忘れさせてしまうほどに、しつかりと回復して、小さな会社ですが営業部長をしているという次男の頼もしい姿を見て、すっかり安堵していました。この町に、日本で有名なデパートの支店があります。そこで家内にスラックスを買っていましたし、近くのスーパー・マーケットでは春先の靴も買っていました。宝石など見向きもしない家内に、『これ欲しい?』といって買って上げたそうにしていました。

 そのデパートに、開店して間もない日本食のレストランがあり、そこで『食事をしよう!』と誘ってくれたのです。指をくわえて素通りして、『誕生日に来よう!』と言うだけで、誕生日にも『またにしようか?』と言っていた日本食でした。油分が多くて、グルタミン酸調味料の効いた地元の食事を、時々、みなさんにご馳走になってきた私たちには、半年振りの懐かしい、信州そば、カレー・ライス、ソースカツ丼でした。美味かった!

 私にも靴を買ってくれたり、『時計は?服は?』と言ってくれました。食べたからだけではありませんし、親元を離れて学んでいた時に、彼に差し入れした「お返し」のようにみえますが、いいえ、懐かしい交わりを運んでくれ、楽しみ喜ばせてくれた、彼の訪問そのものが嬉しかったのです。

 親とは、素晴らしく特権を与えられた種族なのですね。漢族に感謝!

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自己紹介

 次男に勧められて始めた「ブログ」ですが、2007年7月から1年間休刊しました。その間、他の「ブログ」を開設したのですが、2008年7月に、名前を変えて再開しました。  父として子どもたちに、爺として孫たちに、また母や兄弟や友人たちにも、何かを語り残したいと願って、続けています。